今できることから始める | ビジネス向け節約術1
コンサルティングをさせていただく中で、コストを下げることに関する相談がとても多いと言えます。節約はそれぞれ考え方が異なるので、軸を揃え、マインドを整理するよう心がけています。軸が揃い、社内のマインドが整った節約は、目先のコスト削減では得られない結果を生み出します。従業員の意識が変わり、結果として会社が好きになっていかれる気がします。シンプルに業務に集中できるというメリットもあると思います。
興味深いことに健康に役立つ情報と同じで、広く知られている当たり前のことが、結局、大切なんだと思います。とはいえ時代の変化に対応していくことや、総合的に全体像を見据えていくことが重要です。「今できることから始めるービジネス向け節約術」を連載で、弊社のトータルコーディネート思考をご紹介いたします。
オフィススペースと設備
オフィスにお伺いすると、長年、蓄積された不要なオフィス家具、何年も張りっぱなしのポスターや標語が目に飛び込んでくることがあります。もっと根幹のコンサルをしたいのですが、「いつものオフィスを見直してみましょう。」と、アスクルのカタログを一緒に見て注文し、組み立てるところから始めたこともありました。
オフィスレイアウトを最適化することで、不要なスペースを削減することを目指すことは、本当に良い結果を生むと思います。不要な置きスペースや棚、収納があるので、不要なモノが増えていきます。何かを探すのにいつも時間とエネルギーを使うことになります。それで無駄なオフィス家具を処分しましょう。少し綺麗にしてから何社かのリサイクル業者に売却を見積もってもらうこともできます。
新たに購入する場合に備えて、全体の統一感などルール化しておき、予算管理を徹底しましょう。オフィス内の余分な会議室やスペースがあるなら、シェアオフィスとして他社に提供したりサブリースしたりできます。
シェアする時は、共用の水道光熱費の配分をあらかじめ定めておきましょう。個別に電気や水道の使用メーターを取り付けてもらうことも検討できます。余分な冷蔵庫や自動販売機、冷水温水器など本当に必要かどうかを吟味しましょう。
電気使用とエネルギー効率
オフィスの電力使用をチェックする
コンサル先で電気料金の見直しの話をすることがよくあります。通常のオフィスが使用する電気契約は、100Vと単層200Vを使う一般家庭用、三層200Vを使う業務用に分かれています。
一般家庭用は、地域の電力会社により計算方法が異なります。従量制で段階性になっています。第1段階は、ナショナル・ミニマム(国が保障すべき最低生活水準)の考え方を導入した比較的低い料金、第2段階は標準家庭の平均的な料金、第3段階はやや割高な料金となっています。
可能であれば第2段階に抑えることが望ましいです。第3段階目の料金になっていると、いくら節電機器を使用していても、電気代は高くなるので、小まめに消した方が良くなります。業務用電力を利用している企業の場合は、契約の電力内で三層200Vの製品に切り替えることで、一般家庭用を第2段階内に抑えられると節約になります。
オフィスの電化製品の購入
まずは電化製品の数を減らすことを目指すと良いと思います。そのうえで、導入する時は節電製品を選択できます。国際エネルギースタープログラムに掲載されている商品を検討してみましょう。コンピュータ、ディスプレイ、プリンター、スキャナ、複合機、デジタル印刷機、業務用プリンター、業務用複合機のモデルを検索できます。CSV形式も用意されています。
イニシャルコストを抑えても、ランニングコストが上がることがあります。電化製品は壊れる時、廃棄する時のことを考えて購入すると良いと思います。リースの場合は、通常は動産保険にしか入っていません。それで自然故障など対象外の場合があることを確認しておきましょう。
新しく導入すると、ケーブルや周辺機器まで刷新しないと使えないということがあります。また機器間の相性が悪いという場合もあります。ある会社に最新のディスプレイとパソコンを導入したところ、既存の接続ケーブルだとディスプレイ情報が、パソコンに保存されないという不具合が発生することが、設置してから判明したことがありました。そのために高額なケーブルを5回ほど買い替える必要がありました。
弊社では、業務にとって本当に必要なものは何かを調査し、無駄なモノやコトはなくして、より必要な分野にシフトすることをご提案していきます。一般的なネット情報だけだと情報が偏っていることもあります。総合的な機器類の選定、導入時期、トレーニングなど全体をサポートさせていただいています。パソコンは、不完全なOSの上に成り立っているので、ちょっとした変更で不具合が生じることもあります。完璧に選定することは難しいですが、計画的に方向性を定め十分に検討してから導入しましょう。
実用的な節電
パソコン
運用面では、不要な電子機器を切ることが一番ですが、それが不便になると定着しなくなってしまいます。また良かれと思って取り組んでいるはずの節電が、実はトータルで節約になっていないということがあります。例えば、パソコンは稼働すると本体内は65度~90度の温度になります。それを冷却するためにファンが回っています。室温が上がると、冷やそうとするために沢山の電気を使っているということがあります。ちなみに家庭でも室温が上がると冷蔵庫の電気使用量が高くなります。
一年間、パソコン内を掃除していないと、相当汚れていて、冷却効果が落ちてしまいます。パソコン内の温度が上がり、熱暴走して故障の原因になって修理代がかかります。弊社が薦めている5年間保証に入っていたとしても、重要な情報が漏れないように初期化して、修理し使える状態に戻すまでの、期間の不便さを考えると、実態の伴う節約を心掛けたいものです。
デスクトップパソコンは、ノートパソコンの2倍から3倍の電力消費があります。その上、ディスプレイはサイズが大きいほど電力消費が上がります。何台、何十台と使用していると、電気代が高くなります。Windows11では、環境配慮の節電設定にしておきましょう。
プリンター
レーザープリンターは、本体は安く購入しても、トナーや感光体などの交換品が高いということがあります。また保守付きの場合、枚数の単価が設定されているので、使用の仕方によってはかなり割高になります。インクジェットプリンターは、インクの使用頻度が低いと、インクが根詰まりして出なくなることがあります。特に冬季は固まりやすいので、長い休み明けは注意が必要です。どのプリンターでも、カラー印刷は、モノクロに比べて割高になります。それでパソコン側の印刷設定のデフォルトをモノクロにしておくと、不要なカラー印刷を避けられます。
最新型の高性能なプリンターほど、融通が利かない場合があって、安い紙が使えないということもあります。トナーやインクは、化学物質が含まれるものです。パソコンのプリンターやコピー機・ファックスのカートリッジを輸入するに際し、カートリッジ内のトナー、インクに入っている新規化学物質に対して「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」が適用され、厚生大臣及び通商産業大臣に届けなければならないことになっています。
「化学物質による労働災害防止のための新たな規制」が改正され2023年4月から施行されました。「化学物質の自律的管理」に関するものですが、会社がリスクアセスメントをするために、政府が指定する化学物質を入手する際にSDS(安全データシート/Safety Data Sheet)を添付することが義務付けられました。事業場の業種・規模に関わらず、各事業場に「化学物質管理者」を置くことも義務付けられています。職場に入ってくる化学物質全体を把握し、従業員を危険性から保護する必要があります。
照明
照明をLEDに切り替える取り組みがなされています。その際に電球の種類を統一しておくと、交換時にまとめ買いができてお得です。弊社では、なるべくE26の電球タイプにしています。デスク周りは、リモコンで一灯ずつ入切ができ、明るさを変えられるタイプを使っています。直管蛍光灯タイプは、家庭用として普及していない分、導入は割高になります。交換するLEDもランニングコストを計算して導入しましょう。
一般的に照明は、太陽の光を参考に作られています。昼白色は、日中の自然な太陽の色温度、昼光色は、青みがかかった曇り空の太陽の色温度を再現しています。それに加えて演色性が高い照明を選ぶと、物の色がより正確に見えるようになります。
空調
オフィスの温度湿度設定を最適化します。学生時代に飽和水蒸気量について学びました。気温が高くなると水蒸気量は増え、低くなると減ります。労働安全衛生法が出している「事務所衛生基準規則」によると、空調を設けている会社の湿度は40%以上70%以下と定められています。加湿器は、肺などの呼吸器系の疾患をもたらすことがあります。清潔な水を入れ替え、機器類の掃除は小まめに行うようにしましょう。広いオフィスだと昔ながらのKaz VICKSスチーム式加湿器がお奨めです。
夏は、湿度40~50%で、室温27~29度で、強めにサーキュレーターで空気を対流させます。冬は、湿度50~65%で、室温18~22度で、弱めにサーキュレーターで空気を対流させます。カビの発生しやすい時期は、室温と湿度を下げます。雨の日は換気扇を回して、外の水分を取り入れないようにしています。ウイルス対策の時期は、換気を強化し、湿度を60%以上にしています。
室内の熱は、ガラスから逃げてしまいます。それでカーテンを断熱のものにしたり、断熱フィルムを使ったりすると効果的です。もちろんエアコンを付けている時は、窓やドアを開けっぱなしにしないことや、必要もなく換気扇を強く回さない事などを徹底することができます。出入りの多い所は、見栄えが悪いかもしれませんが、ビニールカーテンを利用できます。窓や室外機を、太陽の日差しを緩和させるには、長持ちするプラスチック製の”すだれ”がお奨めです。このように断熱や換気設備を工夫して導入することで、トータルで節約につながります。