- 私と"ウラディミール・ホロヴィッツ"
- ウラディミール・ホロヴィッツについて
- "ヴィルトゥオーゾ"(Virtuoso)
- 私の好きな曲目
- BEST11: Twelve Etudes, Op.8 No.12 in D-sharp minor/Alexander Scriabin"
- BEST10: The Polonaise-fantaisie in A-flat major/Chopin
- BEST9: The Consolations S.172 No.3 in D-flat major/Liszt
- BEST8: "The Dance in the Village Inn: First Mephisto-Waltz" No.1, S.514/Liszt
- BEST7: The Ballade No.1 in G minor, Op.23/Chopin
- BEST6: The Piano Sonata No. 14 in C-sharp minor, Op.27, No.2 named Moonlight Sonata/Beethoven
- BEST5: Piano Sonata No. 23 in F minor, Op. 57, the Appassionata/Beethoven
- BEST4: Violin Sonata No.3 in D minor, Op.108/Brahms
- BEST3: Pictures at an Exhibition/Mussorgsky
- 展覧会の絵が、全体のテーマがあっても、それぞれの作品が持つ個性的な力強さを、ピアノ一台で、見事に演奏した作品だと思う。
- BEST2: The Piano Concerto No.1 in B-flat minor, Op.23/Tchaikovsky
- BEST1: Piano Concerto No.3 in D minor, Op.30/Rachmaninoff
- まとめ
私と"ウラディミール・ホロヴィッツ"
私と"ウラディミール・ホロヴィッツ"の出会いは、自制心について論じたある雑誌の記事の中で、身体面での自己制御の例として紹介されていたからだ。どんな演奏をするのかと興味がそそられ、CDを購入したことがきっかけだ。
最初に買ったのは、ベートーヴェンの3大ソナタが入っている"ベートーヴェン:ピアノソナタ「月光」「悲愴」「熱情」他"だった。ダイナミックレンジが広いとかタッチがどうとかと言うよりも、ホロヴィッツの描いている世界に引き込まれていくようだった。ピアノを一切弾けない私だが、聴き過ぎて夜も寝られなくなるほど、自分好みの演奏だった。
セルゲイ・ラフマニノフ
ホロヴィッツのラフマニノフ協奏曲に惚れ込み、ラフマニノフ自身が演奏している"RACHMSNINOFF PLAYS RACHMANINOFF"を購入してみた。それを聴いて余りのノイズの酷さに、CDの不具合ではないかとCDショップに電話したのを覚えている。このことがきっかけで録音する時点の音源が、大切なんだということを学ぶことになった。もちろん作曲したラフマニノフは素晴らしいのだが、私には凄さやパッションがいま一つ伝わらなかった。
LPレコードとFM
ちなみに高校生くらいまでは、LPレコードか、FMをカセットテープに録音して、音楽を聴いていた。"FMレコパル"や"サウンドレコパル"、鈴木英人のポップな表紙の"FMステーション"などの雑誌を愛読していた。当時は、音楽の途中や曲間のノイズがすごく気になっていた。そんな中、CDが登場し、私のCDコレクションはホロヴィッツで始まったと言っても過言ではない。(実際は、ジョージ・ウィンストンやウィリアム・アッカーマンのウィンダムヒルレーベルも収集していた。)
ウラディミール・ホロヴィッツについて
ホロヴィッツは、現在のウクライナのキエフに生まれ、アメリカに拠点を移した。有名なアルトゥーロ・トスカニーニの娘、ワンダと結婚した。ホロヴィッツの演奏ビデオの中で、二人が回想しているシーンがあったが、お互いのリスペクトが自然に出ていて素敵だなと思った。
ホロヴィッツは、1920年代から1953年までブレイクしていたが、25周年コンサートの後、心の病にかかってしまい12年間スイスなどで静養生活をした。その後、1965年にカーネギー・ホールの歴史的な復帰を果たし、1989年、亡くなる数日前のレコーディングまでの素晴らしい音源が残されている。
ホロヴィッツの演奏
ショパンのエチュードホ長調Op.10, No.3「別れの曲」を例に取ると、RCA Victor版は1度目の絶頂期の録音で"ホロヴィッツ プレイズ ショパン Vol.2"では、4:02秒だ。SONY版は2度目の絶頂期の録音で"ホロヴィッツ/ショパン・アルバム"では、3:36秒だ。いずれもしっとりとしたお別れというよりは、かき乱すほどの別れのシーンを彷彿とさせるような演奏である。
ホロヴィッツは、Steinway&Sons(スタインウェイ社)のピアノ製造番号CD75を愛用していた。何かで読んだのだが、自分好みの音にこだわっていて、特に低音が響くように専属の調律師が調整を依頼していたそうだ。レコーディング技術が今ほど良くない時代だったかもしれないが、とはいえ低音の倍音や、高音のどこかハープのような音が魅力的だと感じる。今気づいたのだがスタインウェイ社のロゴは"ハープ"がモチーフだった。
"ヴィルトゥオーゾ"(Virtuoso)
インターネットのない時代だったので、CDレーベルのリーフレット紹介で読んだことが知識となっていった。「ホロヴィッツは、19世紀ロマン主義の時代に花開いたピアノのヴィルトゥオーゾ派に属する20世紀最大のピアニストでした。」とあった。
インターネットが普及して、"ヴィルトゥオーゾ"について調べたら、伝統的に楽譜を自由に扱う傾向があり、自作を譜面どおりに演奏しないだけでなく、他人の作品でさえ、自分なりのパッセージを演奏に挿入したり、音符を任意に飛ばすこともあったそうだ。なるほど私は実は"ヴィルトゥオーゾ"スタイルが好きなんだ、と府に落ちた。
ホロヴィッツは、モーツァルトを弾く場合、演奏曲以外の曲も勉強し、入手できる異なるバージョンの楽譜も手に入れて、作曲家がどのように弾くことを望んでいるのかを解釈して弾いていたようだ。それだけに自分のお気に入りの演奏だけをCDに残していたようで、曲目が偏っている感があるのも、ホロヴィッツらしいところだ。
私の好きな曲目
私が聴いてきた43枚のホロヴィッツのアルバムの中から、大好きな曲をご紹介したいと思う。
BEST11: Twelve Etudes, Op.8 No.12 in D-sharp minor/Alexander Scriabin”
アレクサンドル・スクリャービンの練習曲の中で、哀愁がある旋律の中に、情熱と力強さのこもった演奏は何度聴いても心に響いてくる。
BEST10: The Polonaise-fantaisie in A-flat major/Chopin
チャールズ皇太子とダイアナ妃が結婚された頃、お二人の前で弾いた演奏だったと思う。会場と恐らくホロヴィッツの緊張感あふれる雰囲気が伝わってくる中、見事な演奏をしている。
BEST9: The Consolations S.172 No.3 in D-flat major/Liszt
リストのコンソレーション第3番変ニ長調は、優しく慰めてくれるような美しい曲だ。"Horowitz Plays Liszt"に収められているが、観客の咳払いが多すぎて集中できない"Horowitz"版は、1985年ニューヨークの自宅で録音されているので聴きやすい。ベース音が響いている余韻の中に、メロディアスなパートが折り重なっているのが好きなところだが、とてもシンプルに奏でている。
BEST8: “The Dance in the Village Inn: First Mephisto-Waltz” No.1, S.514/Liszt
リストの作品の中でも難易度が高いと言われているメフィストワルツ、最初からエネルギー全開の和音・不協和音が、脳をシャッフルしてくれる。とてもホロヴィッツらしさが表れる曲の一つだと思う。
BEST7: The Ballade No.1 in G minor, Op.23/Chopin
バラード1番は、エレガントで重厚感と繊細さの揺れ動く弾き方で、ちょっと気を引き締め直し、襟を正して聴きたくなるような演奏を楽しめる
BEST6: The Piano Sonata No. 14 in C-sharp minor, Op.27, No.2 named Moonlight Sonata/Beethoven
第1楽章からの差し込む"月光"のように、十分に心に響く旋律で癒された後、第3楽章から急に展開が変わって、力強く歌い上げていく感じが、何度聴いても良いなと思う。
BEST5: Piano Sonata No. 23 in F minor, Op. 57, the Appassionata/Beethoven
第一楽章から心に残るメロディアスな旋律を異なるアプローチで、"熱情"を打ち続ける曲。第三楽章に至るストーリと、第三楽章の展開がやっぱり好き。気合を入れる時によく聴いている。
BEST4: Violin Sonata No.3 in D minor, Op.108/Brahms
ナタン・ミルシティとの掛け合いが素晴らしく、最初から引き込まれていく。ブラームスのヴァイオリンとピアノの二重協奏曲、シンプルでいて力強い、魅力的な作品だと思う。
BEST3: Pictures at an Exhibition/Mussorgsky
展覧会の絵が、全体のテーマがあっても、それぞれの作品が持つ個性的な力強さを、ピアノ一台で、見事に演奏した作品だと思う。
BEST2: The Piano Concerto No.1 in B-flat minor, Op.23/Tchaikovsky
チャイコフスキーの生きている時代にホロヴィッツが弾いていたら、チャイコフスキーの評価も変わっていたかもしれない。トスカニーニの指揮だが、お互いが曲の良さを引き出そうと持てる力を出し合っている、そんなところに魅力を感じる。
BEST1: Piano Concerto No.3 in D minor, Op.30/Rachmaninoff
もう最初から最後まで入り込んでしまう、ラフマニノフの協奏曲は2番も良いのだが、ホロヴィッツが3番を愛していたことがうなづける。素晴らしい曲、素晴らしい演奏。昔から一番、大好きな曲。
まとめ
音楽って良いな、ピアノ弾ける人って良いなと思った。ホロヴィッツが改めて素晴らしい演奏家だということが分かった。音楽って不思議と通じるものがあるなと思うのが、他のピアニストの曲を聴いて、良いなと思ってライナーノーツを見ると、ホロヴィッツが好きだとか書いている時があって、やっぱりなと思うことがある。
これからは、"ヴィルトゥオーゾ"スタイルでいこう!